AIエージェントとRPAの違いとは?各々の定義と違い、今後の市場予測を解説

少子高齢化に伴い、著しく労働人口が減少している現代では、企業の業務効率化は喫緊の課題です。業務効率化の手段として、これまで人間が行っていた業務を自動化するツールが次々と登場しています。中でも今回取り上げるのは、「AIエージェント」と「RPA(Robotic Process Automation)」です。

AIエージェントは、高度な処理能力を持つ最新のAI技術として注目されています。一方RPA自体は新しい技術ではありませんが、近年のAI技術の発展と人手不足を背景に注目を集めています。どちらも業務効率化に貢献する技術ですが、その機能や特徴は全く異なります。

本記事では、AIエージェントとRPAの違いを詳しくご紹介します。また具体的な導入事例も交えながら、それぞれのメリット・デメリットの比較、今後の課題と市場予測を深掘りしていきます。

AIエージェントとRPAの定義

AIエージェント

AIエージェントとは、「自分で考えて行動するAI」です。ユーザーの目的を理解し、最適なアクションを自動で行う人工知能システムで、与えられたデータや決められた範囲内の業務だけでなく、より複雑な状況にも対応できます。

また、人間のような柔軟な行動が可能であり、環境や状況を把握し、自律的に判断・行動する点が大きな特徴です。同時に、経験から継続的に学習し、リアルタイムで複雑なタスクを自動で実行する能力を持ちます。

例えるなら、AIエージェントはホテルの優秀なコンシェルジュです。コンシェルジュは、顧客の「目的地」「予算」「旅行期間」などの情報を基に、航空券やホテルの予約、観光ルートの提案、さまざまなトラブルへの対応をして快適な旅をサポートしてくれます。同じように、AIエージェントもニーズを把握して柔軟に動くことで業務がより快適で効率的になるようサポートしてくれます。

AIエージェントについての詳しい説明はこちら
関連記事:AIエージェントを知る!基本から活用事例・未来の影響までを徹底解説

RPA

RPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)は、主に定型的な業務を自動化するための技術です。ユーザーが行っている一連の作業を模倣し、システム上で実行することができます。例えば、データ入力やマウスクリック、メール送信などの反復作業を自動化することで、業務効率化を図ります。

複雑な意思決定や判断を必要としない単純作業を自動化することに特化しており、事前に設定されたルールに基づいて動作します。そのため、プログラムされた範囲内で高い精度でのタスク実行が可能であり、ヒューマンエラーのリスクを減少させることができます。

AIエージェントとRPAの比較

以下のAIエージェントとRPAの違いをまとめた表から、メリット・デメリットや事例を中心に詳しく比較をしてみましょう。

項目AIエージェントRPA
定義人間の知的行動を模倣し、学習や判断を行うシステム。
非定型業務や複雑なタスクの自動化に適している「自分で考えて行動するAI」
ソフトウェアロボットによる業務自動化ツール。
主に定型的なデスクワークを自動化する「人間が指示した手順通りに動くツール」
主な機能・自然言語処理
・画像認識
・意思決定支援
・学習と適応
・データ入力の自動化
・定型業務の処理
・複数アプリケーション間の連携
適用範囲複雑で非定型的な業務。
例:顧客対応、診断支援、マーケティング分析など。
明確なルールや手順が存在する業務。
例:請求書処理、在庫管理、データ移行など。
導入の難易度高い。専門的な知識や大量のデータ、学習期間が必要。比較的低い。プログラミング知識がなくても設定可能なツールが多い。
柔軟性高い。新たな状況やデータに適応し、自律的に学習・判断が可能。低い。業務手順の変更や例外処理に弱く、変更時には再設定が必要。
具体的な事例・AIチャットボットによる顧客対応の自動化
・画像認識を用いた診断支援システム
・マーケティングキャンペーンの最適化
・データ入力の自動化による人為的ミスの削減
・定型業務の自動化による業務効率化
メリット・複雑な判断や予測が可能
・学習により精度向上
・多様な業務への適用が可能
・自律的な業務プロセスの実現
・単純作業の自動化による効率化
・人為的ミスの削減
・24時間稼働が可能
デメリット・学習データの質に依存
・判断過程がブラックボックス化する可能性
・柔軟性に欠け、業務変更に対応しにくい
・例外処理に弱い
・メンテナンスが必要
将来性急速に進化するAI技術に支えられ、広範な業務領域での適用が進むことが予想される。特に、動的で複雑な業務環境における意思決定支援やプロセス自律化の分野で重要な役割を果たす。定型業務の効率化を担うツールとしての役割は一定程度残るものの、高度な自動化のニーズには限界がある。

AIエージェントのメリット・デメリット

AIエージェントのメリット:複雑な判断や予測が可能・学習による性能向上・自律的な業務プロセス実現 AIエージェントのデメリット:学習データの質に依存・判断プロセスのブラックボックス化

  • メリット

    1. 複雑な判断や予測が可能
      • AIエージェントは、単純な自動化を超えて、複雑な状況に対して柔軟に対応できる。特に、膨大なデータを解析し、学習によって精度を高めることが可能で、予測や推論をもとにした判断をサポートする。
      • 例1)顧客からの問い合わせに対して、過去の対応履歴や顧客情報などを分析し、最適な回答を自動生成する。
      • 例2)過去の実績データ、気象データなどを用いて将来の需要を予測して在庫管理を最適化する。
    2. 学習による性能向上
      • AIは、時間が経つにつれて性能が向上するため、特に顧客対応や複雑な業務において価値が高まる。学習機能を搭載しているため、パターンやルールを学習することで自ら進化し、状況に最適な判断を行う。
      • 例1)顧客対応において、過去の会話データから顧客のニーズや行動パターンを学習し、より的確にパーソナライズされたサービスを提供する。
    3. 自律的な業務プロセスの実現
      • AIエージェントは、自己学習を通じて、日々変化する業務やデータに適応できる。この特性により、業務プロセス全体の自動化、効率化に繋がり、人間の介入を最小限に抑えながら、より迅速かつ正確な業務の遂行ができる。
      • 例1)顧客からの問い合わせに自動応答し、必要に応じて担当者にエスカレーションする。

 

  • デメリット
    1. 学習データの質に依存
      • AIは学習データに基づいて動作するため、質の高いデータを持っていないと、適切な判断ができない場合がある。
    2. 判断プロセスがブラックボックス化する可能性
      • AIエージェント、特にディープラーニングのような高度な学習方法を採用したAIは、その判断プロセスが非常に複雑で、内部の動作を人間が理解することが難しい場合がある。
      • AIの判断プロセスがブラックボックス化すると、意図しない判断結果が出た場合に、その原因を特定することが困難になったり、重要な決定を行う場合、その責任の所在が曖昧になる可能性がある。

RPAのメリット・デメリット

RPAのメリット:単純作業の効率化・導入が比較的容易・24時間稼働可能 RPAのデメリット:柔軟性の欠如・システム変更時に再設定が必要

  • メリット
    1. 単純作業の効率化
      • RPAは、明確なルールに従った反復的な作業を非常に効率的に自動化できる。そのため人間が手動で行う作業が減り、作業効率の大幅な向上が期待できる。
    2. 導入が比較的容易
      • RPAは、プログラムをあらかじめ設定するだけで運用を開始できるため、比較的簡単に導入できる。
      • 高度なプログラミングスキルはあまり必要なく、ツール自体も使いやすいため、業務担当者でも導入しやすい。
    3. 24時間稼働可能
      • RPAは、人間の作業時間に関係なく24時間稼働が可能。業務が夜間でも継続できるため、業務効率が向上する。

 

  • デメリット
    1. 柔軟性の欠如
      • RPAはあくまで定型的な業務に特化しており、複雑な判断や状況に応じた柔軟な対応が難しい。
      • 業務が変更された場合、再設定が必要となり、その手間が発生する。
      • プログラムされていない業務には対応できない。例えば、意思決定を伴う業務や予測・推測を要する業務には向いておらず、対応できる範囲が限られる。
    2. システム変更に対する再設定が必要
      • 業務の内容が変更されたり、システムがアップデートされたりした場合、RPAの設定を変更しなければならないことが多い。そのため追加の工数やメンテナンスが発生する可能性が高い。

事例

AIエージェントの事例

  • カスタマーサポート
    • 顧客からの問い合わせに対して、AIエージェントがチャットボットとして活用され、24時間体制で回答を提供する。
    • オンラインショッピングサイトにおいて、AIエージェントが商品の在庫確認や注文状況の追跡などを行い、顧客満足度向上に貢献する。
  • 金融業界
    • AIエージェントを活用した投資アドバイザーが登場。顧客の投資ニーズに基づいて、リアルタイムでアドバイスを提供し、ポートフォリオの最適化を図る。

RPAの事例

  • 会計業務
    •  企業の会計部門で、RPAを使用して請求書の処理や振込処理を自動化。これにより、事務作業の手間が減り、人的エラーも削減された。
  • 人事管理
    • RPAを導入して社員の勤怠データの集計や給与計算を自動化。これにより処理速度が向上し、エラーのリスクも減少した。

RPAの問題点

AIエージェントとRPAのどちらにもメリット、デメリットを持ち合わせていますが、AIエージェントと比較すると、RPAには重大な問題があります。

それは、RPAでは変化に対応できず、完全自動化は難しいということです。

RPAは、事前に設定されたルールに基づいて作業を自動化します。そのため、例外処理やエラー対応など、イレギュラーなケースには対応できません。組織の業務の中で、約80%は自動化が可能と考えられていますが、残りの約20%はイレギュラーなケースであり、人の手による対応が必要となります。

RPAは、特定の業務フローやシステム環境に合わせて開発されるため、業務や環境に変化があると、シナリオを修正する必要があります。このシナリオはプログラミングコードで記述されていることが多く、専門知識を持つ担当者でなければ修正は困難です。また、変更の影響範囲を特定し、適切に修正するには、十分なテストと検証が必要になります。また場合によっては、シナリオ以外にも、監視・運用体制の変更、マニュアル更新、関係者周知、外部データ連携の修正などの修正が必要になり、さらに工数や人手がかかります。市場の変化に合わせて迅速に対応することができないため、柔軟性の欠如は、業務フロー改善のサイクルを回すことも難しくします。

これらの理由からRPAは変更に弱く、臨機応変な判断や対応ができないために、変更が発生するたびエラーのリスクが高まる危険性を持っています。エラーが頻発することで業務の効率が低下するだけでなく、データの信頼性も損なわれる可能性もあります。(参考:RPAの終焉

RPA市場の課題と今後のAIエージェント市場の予測

AIエージェントとRPAの比較をしてきて、それぞれの特性が見えてきました。では、最後にRPA日本市場の課題とAIエージェントの市場予測をしていきます。

活況を呈する日本のRPA市場

日本は世界的に見てもRPA市場が非常に活発であり、世界市場の4分の1を占めるとも言われています。

株式会社MM総研の「RPA国内利用動向調査2022」によると、年商50億円以上の企業では約半数がRPAを導入しており、年商50億円未満の企業でも導入が進んでいます。以下の矢野経済研究所が行った「RPA市場に関する調査(2020年)」でも、市場の急拡大が確認できます。

Precedence ResearchのRPA市場についてのレポートによると世界でも市場は大きく、2033年には1,785億5,000万米ドルに達すると予測されていますが、それでも日本のRPA市場の拡大は世界から見ても非常に高い水準にあります。

しかし、AIエージェントの台頭により、今後RPAの成長は鈍化する可能性も示唆されています。

日本のRPA市場における落とし穴と課題

日本と海外のRPAは根本的に導入の仕方が違います。

海外では、多様な文化を持つ人々が共に働く環境にあるため、誰もが同じように業務を遂行できるよう「業務の標準化」が重視されています。そのため海外、特に欧米企業の多くは、経営者が現場の実情を把握した上で導入等の判断を下す「トップダウン方式」をとっているといわれています。RPAの導入に関しても、経現場の業務を踏まえた上で、経営者が判断を下しているケースが多いです。

一方日本では、同じ文化背景を持つ人がほとんどであること、終身雇用制などの雇用慣行、縦割り重視の文化から「業務の標準化」が重要とされてきませんでした。こうした環境下では、現場の担当者がそれぞれの経験や知識に基づいて業務を遂行し、改善提案を行うことが期待されます。そのため、現場の意見や提案をもとに経営者が判断する「ボトムアップ方式」を採用する企業が多いといわれています。
RPAの導入に関しても、現場のニーズや要望に基づいて、個々の部門や担当者が独自にRPAツールを選択・導入するケースが多く見られます。そのため、RPA導入が組織全体で最適化されず、部分的な効率化にとどまる場合や、部門間の連携がうまくいかないといった課題も生じています。

日本でRPAが大流行した背景としては、『人手不足や働き方改革の影響が出るため、業務効率化をしたい。しかし部署や現場ごとに業務が最適化されており属人化してしまっているため、この属人化している業務を代わりに行ってほしい』と多くの企業が求めた点にあります。

しかしRPAツールを導入し、機能させるには、作成するための工数、人件費、管理維持費等のコストなどの課題があります。また、RPAは定型的な業務において真価を発揮できるため、導入以前に業務が標準化されている必要があります。

そもそも導入自体に、「工数削減やコストカットにつながるのか」、「それをすることの意味はあるのか」を問う必要があります。

業務効率化は非効率な工程を省くことで生産性の向上に繋げる一つの手段です。生産性向上とは、提供価値/工数と定義されます。つまり、いかに少ない工数でより多くの価値を提供できるかが生産性向上の鍵となります。

ここで重要なのは、提供価値をいかに上げるか という視点です。

単に工数を削減するだけでなく、顧客や社会にとって価値のあるものを生み出すことが、真の生産性向上につながります。
「提供価値の向上」を完全に無視したRPAの導入・実装は、自動化した業務のブラックボックス化を招き、改善が困難になる可能性があります。さらに業務フローが変更となった際などに、RPAが対応しきれずに完全に身動きが取れなくなってしまうかもしれません。

また、企業は変化する市場に対して、提供できる価値の総量を上げ続ける必要があります。
しかし、RPAは同じ業務の繰り返しであるため、そもそも変化する市場に対応することができません。既存の業務を効率化するツールであり、新たな価値を生み出すわけではないため、提供できる価値の総量を上げることも難しいといえます。

RPAにはこのような落とし穴があることを認識し、「業務プロセスを見直すこと」、「一時的な業務効率化を目指すのではなく、目的を『価値提供向上』に定めること」が重要になります。

AIエージェントが優れている理由

AIエージェントは、人工知能(AI)を活用することで、RPAでは対応しきれなかった、より動的で複雑な業務を自動化することができます。

例えば、AIエージェントは、以下のような高度な機能を実現しています。

  • 条件分岐や例外処理など複雑なルールを含む業務フローへの対応
  • データ分析や予測に基づいて、状況に応じて最適な行動を判断できるため、非定型業務にも対応可能
  • 文脈を理解することで、より的確な判断や対応ができる
  • 市場の変化に合わせ柔軟にフローを変更できるため、継続的に改善できる
  • 画像や音声、自然言語といったRPAでは扱いにくい非構造化データを理解し、処理する能力がある
  • 経験から学習し、自ら能力を向上できる

これらの機能により、AIエージェントは、RPAでは対応しきれなかった、顧客対応、マーケティング支援、診断・予測業務など、幅広い分野で活躍が期待されています。またAIエージェントの導入により、企業は業務効率の向上だけでなく、コスト削減、ヒューマンエラーの削減、顧客満足度の向上、意思決定の質の向上などの効果が得られることも期待されています。

2025年はAIエージェントの時代とも言われており、AI技術の進化とともに、AIエージェントはさらに高度化していくと予想されます。将来的には、AIエージェントが人間の指示を必要とせず、完全に自律的に業務を遂行できるようになる可能性もあるでしょう。

今後のAIエージェントについての理解を深め、積極的に取り入れていくことは、変化の激しい市場に対応し、社会に提供できる価値を高め続ける上で不可欠な取り組みといえます。

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