AIエージェントを知る!基本から活用事例・未来の影響までを徹底解説
AI技術は急速に進化し、私たちの働き方や生活を劇的に変えつつあります。中でも「AIエージェント」は、業務の自動化、意思決定の支援など幅広い分野でその能力を発揮し、新たなビジネスモデルを生み出すことで、産業構造において変革を起こそうとしています。
本記事では、今後流行する「AIエージェント」について理解するため、特徴や生成AIとの違い、業界での活用、そして今後の社会への影響について詳しく解説します。
AIエージェントとは
AIエージェントとは、ユーザーの目的を理解し、最適なアクションを自動で行う人工知能システムで、簡単に説明すると、「自分で考えて行動するAI」のことです。
従来のAIは、与えられたデータに基づいて、決められた範囲内でしか動作できませんでした。一方、AIエージェントは、より複雑な状況に対応でき、人間のように柔軟な行動が可能であり、環境や状況を把握し、自律的に判断・行動する点が大きな特徴です。また同時に、経験から継続的に学習し、リアルタイムで複雑なタスクを自動で実行する能力を持ちます。
言葉の観点からも見てみましょう。
AIエージェントは、「エージェンティック AI」とも言われています。「エージェンティック」という形容詞は、一般的には主体性、能動性、行為主体性といった意味合いを持ちます。そのため自律性や自己指向、特定の目標達成に向けて独立した行動を取る能力やフィードバックから学習する性質を備えたAIシステムであることを指しています。
また「エージェント」という名詞は、代理人を意味します。人間の代理人として、人間が指示を出すことなく与えられた目標を理解し、自律的に達成行動に移すAIシステムであることを指しているのです。
当初のAIは主に「データの分析と予測」が中心でしたが、AIエージェントはそれに加えて「タスクの実行」や「問題解決」にまで踏み込むため、業務効率化や日常生活の便利性を飛躍的に向上させる可能性を秘めています。
AIエージェントの特徴は以下です。これらの特徴によって、さまざまなタスクを自動化し複雑な業務プロセスの効率化を図ることができます。
AIエージェントの特徴 | |
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自律性 | 設定された目標に向けて自律的に行動を選択し、実行する能力。 |
環境認識 | 外部からの情報を活用して環境の状況を認識する能力。
この能力はAIエージェントが環境に適応し、効率的にタスクを遂行するための重要な要素である。 |
学習能力 | フィードバックを通じて学習し、進化する能力。
経験からの学習は、AIエージェントの進化において重要な要素である。 |
意思決定 | 収集した情報を情報を評価、目標達成に向けた最適な行動を選択することが可能。
データに基づく選択は、AIエージェントの意思決定プロセスにおいて重要な要素である |
適応性 | 環境の変化に応じて迅速に行動を調整し、パフォーマンスを最適化する能力。 |
目標指向性 | 設定された目標を理解し、達成するために最適な行動を選択する能力。 |
社会性 | 他のエージェントや人間と協調して作業を行う能力。 |
生成AIとの違い
生成AIは2010年代後半から急速に進化し、特に2022年に登場したChatGPTによって一般にも広く普及しました。現在では、ビジネスや教育、エンターテインメントなど、さまざまな分野で活用されています。生成AIとAIエージェントは混同されがちですが、明確な違いがあります。
生成AI | AIエージェント | |
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学習 | 教師あり学習。 学習するために、正解と不正解のペアとなる大量のデータ(教師データ)が必要。 | 強化学習。 環境の中で試行錯誤し、目標を達成するための最適な行動を学習。 |
目的 | 主な目的は文章、画像、音楽など、新しいコンテンツを生成すること。 | 主な目的は環境の変化に対応しながら、自ら判断し行動すること。 |
機能 | 与えられたデータのパターンを認識し、新しいコンテンツを生成する。 | 目標達成のために、複数のステップを考え、実行する。 |
モデルの 複雑性 | 比較的単純な構造で、与えられたデータに基づいた生成を行う。 (モデルとプロンプトを使用して、静的なシングルステップ出力を生成) | 複雑な環境の中で、様々な要因を考慮しながら行動する。 (アルゴリズムと環境との相互作用を使用して、複数のステップで環境の状態と環境の状態を適応および変更する) |
環境との 相互作用 | 受動的かつ反応的。 =入力への反応のみ積極的外部の入力に対して反応するのみ。 | 自律的であり、 目標によって動かされる。 =自ら目標を設定し、その達成に向けて積極的に行動する。 |
※一部の生成AIでは強化学習の採用あり。ChatGPTのような高度な会話型AIは、人間のフィードバックに基づいた強化学習(RLHF)によって学習が進められている。
つまり、生成AIは「与えられた情報やデータに基づき、新しい結果やコンテンツを生成するAI」、AIエージェントは「目的に応じて自ら学習しながら、問題を解決し目標を達成するために行動するAI」と言えます。
どちらのAIが優れているかというのは、どのようなタスクに用いるかによって異なります。また両方のAIを組み合わせることで、より高度なタスクを実現できる可能性も考えられます。
AIエージェントの種類と具体例
AIエージェントにはいくつかの種類があり、用途や機能によって分類されます。以下は主要なAIエージェントの種類です。
- 単純反射エージェント
- 入力データを基に学習することなく現在の状況に反応し、定義されたルールで外部環境の変化に迅速に対応するという目的に応じて、事前に定義されたルールに従って行動を決定し問題を解決します。過去のデータや状況の履歴は考慮せず、現在の状況だけに反応するシンプルな仕組みです。
- 例:自動応答のチャットボットや、温度センサーによる空調システムのオン・オフ
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ゴールベースエージェント
- 設定された目標(ゴール)を達成するという目的に応じて、現在の状況データを活用しながら学習、必要な行動を選択し、問題を解決します。目標達成のために必要なステップを計算し、柔軟に意思決定を行うことが可能です。
- 例:ナビゲーションシステムや、経路最適化を行う配送システム
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効用ベースエージェント
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単に目標を達成するだけでなく、効用(満足度や価値)を最大化するという目的に応じて、複数の選択肢を比較しながら学習、最も効用が高い行動を選択し、効用の最大化を実現させます。
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例:顧客満足度を最大化するための商品・サービス提案システムや投資最適化AI
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学習エージェント
- パフォーマンスを向上させるという目的に応じ、環境との相互作用を通じて経験から学習し、より効率的な行動を見つけ出します。過去の行動と結果をフィードバックすることで継続的に改善していくことができます。
- 例:自動運転車が運転データから学習するシステムや、強化学習を用いた対戦型ゲームのAIプレイヤー
多くの種類、機能があるAIエージェントは、ソフトウェア開発、ヘルスケア、金融などの多岐にわたる分野で応用され、各業界で革新的な変化をもたらしています。それぞれの分野での実際のアプリケーション活用例を3つ紹介します。
- ソフトウェア開発
- 必要なコードや、その他アートファクト(設計図・テストケース・ドキュメントなど)の生成、実行、チェックを自動化してサポートすることで、ソフトウェア開発者はより付加価値の高い活動に集中できるようになります。
- ヘルスケア
- データ分析と意思決定支援を通じて、診断の精度向上と個々の患者の特徴に基づいた治療計画を提案するなどよりパーソナライズされた治療を行うことで、入院期間とコストを削減することができます。
- 例えば、医療資源が不足している地域では、AIエージェントが医師による個別治療計画の作成を支援することで、医師の指示のもと治療を行う臨床専門家の負担を軽減することができます。
- 金融
- 不正検出の強化、取引戦略を最適化し、一人ひとりの年齢や職業、収入、資産、リスク許容度などの状況や目標(老後資金、マイホーム購入など)に合わせて、最適な金融に関するアドバイスをするのに役立ちます。
- お客様の取引履歴、経済指標、市場の動向など、膨大な量のデータを分析しパターンやトレンドを見つけ出し、より迅速かつ的確な意思決定をサポートします。
参考:World Economic Forum:Navigating the AI Frontier
AIエージェントは今後社会にどういう変化を起こすのか
AIエージェントは、高度な推論能力と学習能力を備え、従来は人間にしかできなかった複雑なタスクを自律的に実行できるようになります。これにより、人手不足の解決、労働の変革をもたらすことが期待されています。
人材不足が深刻化する中、AIエージェントは専門知識が不足している分野や、需要の高い分野におけるスキルギャップを埋めることで、社会全体の生産性を向上させ人手不足の解決に寄与します。
労働の変革とは、AIが繰り返し行われる業務や意思決定などの日常業務をサポートすることで、単純作業から解放されることを指します。AIのサポートによりできた余剰時間を活用することで、よりクリエイティブな活動に専念でき新しい価値を創造することができます。
AIエージェントの社会導入は、世界に先駆け、少子高齢化と労働力不足に直面する日本において最重要となります。過去30年にわたる経済停滞である「失われた30年」を越え、「日本経済の発展」を目指す上ではAIの活用は不可欠なのです。
今後、あらゆる領域でAIが組み込まれ人間の業務をサポートすることで、我々は創造的な活動に集中できるという時代がやってくるでしょう。しかし一方で、人間の仕事がAIに代替されることで、多くの人が「生きがい」や「働きがい」を見失う可能性も懸念されます。
AIエージェントは経済的停滞や労働力不足といった課題を解決する大きな力となると同時に、「なぜ働くのか」「どう生きるか」といった根源的な「人間が生きる意味」を問い直し、新たな社会価値を創造する一助になるでしょう。
これからの時代は、DXを基盤とした新たな進化、AX(AIトランスフォーメーション)が求められています。日本は、少子高齢化や経済停滞といった課題を抱え、DXへの取り組みが遅れていると言われてきました。
しかし、AIの急速な発展は、日本がこれらの課題を克服し、新たな成長軌道に乗るための大きなチャンスでもあります。
今、世界はAIの「導入の是非」を超え、「どう活用し、未来を創造するか」という段階へと進んでいます。atarayoは、この流れを日本で先導する存在として、社会や企業が抱える課題に対し、AX・DXで解決を目指します。